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女三の宮・若菜上

若菜下の一場面を作画構成の資料としてメモしてみました。

女三の宮は朱雀院が一番可愛がった女宮で、この若菜上で光源氏と結婚して、六条院の春の町という区画の寝殿という建物の西側に正妻として住んでいました。14歳くらいです。またこの建物の東側には明石の女御という方が一時いましたが、 出産した若宮をつれて参内していて今はいません。

寝殿には短い渡り廊下でつながった東対という建物があり、そこには光源氏に幼少のころ見初められ、育てられ結婚し長年連れ添った妻の紫の上が住んでいます。この六条院の別の区画には光源氏の他の妻たちが住んでおり、その妻たちの中で、今までは紫の上が光源氏の正妻のようなものとして扱われていました。しかし身分の高い女三の宮が降嫁して、今では光源氏の正妻として扱われています。

蹴鞠の場面に移ります。

三月下旬の風が吹かない日、桜の木々の夕映えは大変美しかった。

庭の木立にとても霞がこめている。色々の開花しかけの花の木。まだもえぎはわずかだ。

【A一年で一番のよい気候】【B春の花と光の美しい景色】
寝殿前の広場の東側のところのおそらく五から六間四方の場所でかんの君やその兄弟、夕霧たちが蹴鞠をしていた。立派な方々も皆熱中し、お衣装もすこし乱れてがちである。光源氏は蛍兵部の宮とその様子をみている。
【Cにぎやかな音・声】【D公達たちの華やかな衣装】
Aで端近にいても不快ではない温度。外出することのない若い健康な女性であればB、C、Dを見たい聞きたいだろう。そして女三の宮には母親がおらず、親身になって教育してくれる母親代わりの女性も期待できなかった。「女房たちが見物に端近へいっても、あなたは高貴な姫なのだから、部屋の奥深くにいるのですよ。(あと女房たち自身が端近へ寄っても、あまり外に気配を感じさせない様にね。)」と言ってくれる人間がいなかった。

【人が端近にいることで、部屋の気配のよくもれる女三の宮のお住まい】
(今まで朱雀院のそばで過ごしてきたから仕方ないのか。しかし結構な描写をされている。)
☆全体的にまとまって慎もうともしない気配。
イ・御簾からいろいろな衣装の端がこぼれ出て、景観として綺麗ではあるが、おそらくその分御簾に近寄りすぎていて、人の影見える。
ロ・几帳もしどけなくひきやっていて、人の気配が近い。

・イ・ロにより、部屋の様子があまりによく外へ知れる。

(そこに唐猫が走ってきたので、)

・女房たちはおびえてさわぎ、はしたなく、そよそよとみじろきして、さまよう気配がする。

・衣ずれの音が庭にいる人の耳にかしましい。

・(出て行った猫のひもで)御簾の端がとてもあらわに引きあげられているのを、すぐに引き直す女房もないない。
【女三の宮の外見は美しい】

与謝野晶子訳 青空文庫より

「几帳より少し奥の所に袿姿うちぎすがたで立っている人があった。階段のある正面から一つ西になった間まの東の端であったから、あらわにその人の姿は外から見られた。紅梅襲がさねなのか、濃い色と淡うすい色をたくさん重ねて着たのがはなやかで、着物の裾は草紙の重なった端のように見えた。桜の色の厚織物の細長らしいものを表着うわぎにしていた。裾まであざやかに黒い髪の毛は糸をよって掛けたようになびいて、その裾のきれいに切りそろえられてあるのが美しい。身丈に七、八寸余った長さである。着物の裾の重なりばかりが量かさ高くて、その人は小柄なほっそりとした人らしい。この姿も髪のかかった横顔も非常に上品な美人であった。夕明りで見るのであるからこまごまとした所はわからなくて、後ろにはもう闇やみが続いているようなのが飽き足らず思われた。鞠まりに夢中でいる若公達わかきんだちが桜の散るのにも頓着とんちゃくしていぬふうな庭を見ることに身が入って、女房たちはまだ端の上がった御簾に気がつかないらしい。猫のあまりに鳴く声を聞いて、その人の見返った顔に余裕のある気持ちの見える佳人であるのを、衛門督は庭にいて発見したのである。」

 

青空文庫 源氏物語若菜(上)紫式部與謝野晶子訳 より

底本:「全訳源氏物語 中巻」角川文庫、角川書店 
   1971(昭和46)年11月30日改版初版発行
   1994(平成6)年6月15日39版発行
※このファイルは、古典総合研究所(http://www.genji.co.jp/)で入力されたものを、青空文庫形式にあらためて作成しました。
※校正には、2002(平成14)年1月15日44版を使用しました。
入力:上田英代
校正:門田裕志、小林繁
2004年3月9日作成

 

 

紫式部は人間関係を書いたと言われています。
源氏物語は深いです。